一途な小説家の初恋独占契約
不安なジョーは、家でも学校でも、遊びに行った先でも、いつでも私を頼った。

ジョーとの文通で、英語を頑張って勉強していたのが良かったのだろう。
私の英語は、同級生に比べれば、多少マシだった。

ジョーは、おぼつかないながらも何とか日常会話は日本語でできたけれど、今のように流暢ではなかったし、人見知りの繊細な少年だった。

妹がいるせいか、頼られると張り切ってしまうタイプの私は、ジョーが懐いてくれるのが嬉しくて、姉のような気持ちで、どこにでもジョーを連れ回し、あれこれ教えてみせたのだった。

「ラザフォード先生、その件は後にして、先に少し打ち合わせをお願いできますか? 窪田さんは、こちらにちょっと……」

寺下部長に呼ばれ、私が離れようとすると、ジョーが名残惜しげに私の手を握った。

私は、大丈夫という意味を込めて、分厚い手を握り返す。
ニコッと笑うと、ようやく離してくれた。

ジョーの下には、編集部の別の人が書類を持って近寄っていくのを避けながら、入れ違いに私は寺下部長へ駆け寄る。

「窪田……」

通り過ぎ際、心配そうに声をかけてくれた直島さんに頷いてみせる。

秋穂は、目をキラキラとさせていた。

「感動の再会だったね」
「茶化さないでよ」

小声でたしなめて、部長の後に続く。

部長は、私を会議室の外へと連れ出した。
ピンヒールを物ともせず、階段を駆け下りていく。

「ラザフォード先生とは、どのくらい親しいの?」
「中学1年生の頃から、ずっと文通しています。1、2週間に一度のペースで」
「凄いわね、今どき文通って。電話やメールはしないの?」
「したことがありません。でも、中学3年生のときに、2週間私の家にホームステイしました」
「そう……そんなに古くからの知り合いなのね」

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