一途な小説家の初恋独占契約



メールを処理するというジョーに紅茶を淹れ、私はお風呂の掃除をした。

戻ってみると、ジョーはタブレットを閉じていた。
用事は、終わったようだ。

「ジョー、お風呂に入る?」
「一緒に?」
「別々です! そういうこと言うと、本当に追い出すよ?」
「オーケイ」

急に外国人めいた仕草で両手を上げた。

それがおかしくて、つい笑ってしまう。
ジョーに怒るのは、難しい。

「汐璃が先にどうぞ」
「私、時間かかるよ。あ、日本の昔の文化なら、男の人が先じゃないかな。家族の中では、お父さんが先に入ったんだよ」
「そうなんだ。勉強にはなったけど、レディファーストで。時間は気にしないで、ゆっくり入っておいで」

お言葉に甘えて、そうさせてもらった。
まだ時間も早いし、いつもは適当なドライヤーも、お風呂場を出ればすぐジョーと会うと思うと、丁寧にかけてしまう。

……スッピンなのは、仕方ないか。
家に泊まるというのに、夜も朝もメイクしたままというのは、大変だ。

「お先に、ありがとう」
「じゃあ、僕も」

タオルで顔を隠し気味に出て行ったら、特に何も言われなかったのでホッとした。

縁側で涼みながら読むのは、ジョーからもらったたくさんの手紙だ。
実家からこちらに引っ越すときも、全部持って来ていた。

中学生の頃の手紙は、字も幼い気がする。

学校の授業の一環で、儀礼的に書いていただけの手紙は徐々に長くなり、お互いの心の内を晒しあうようになっていった。

楽しかったことも、悲しかったことも、全部書いた。
きっと、ジョーも同じだったはずだ。

「汐璃?」
「ひゃっ!」

つい夢中になって読んでいたら、ジョーが和室に入ってくるところだった。

それはいい。
それはいいけど、なんで裸なの!?

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