一途な小説家の初恋独占契約
「ちょっと、ジョー! 服着て!」
「着てるだろう?」
「着てない。上も着て!」
「だって、暑いよ」

スウェットのズボンだけを身につけたジョーは、構わず縁側にやって来た。

「……僕より、汐璃が心配。こんな薄着で外に出ないで」
「え? 外って言っても、縁側だよ?」

ジョーと違って、半袖短パンの部屋着を、上下ともちゃんと身につけている。
コンビニくらいなら、このくらいの格好で外出する人もいるだろう。

「警戒心がなさすぎるよ。誰かに見られたら、どうするの? 一人で暮らしてるのに、いつもこんなふうにしてるの?」

縁側の先は小さな庭があり、庭木の向こうにはブロック塀もあるのだから、外から人に覗かれるようなこともない。

腑に落ちない私に溜め息をついたジョーは、いきなり私を持ち上げた。

「ひゃっ!?」
「危ないから、ちゃんと掴まって」

お姫様抱っこだ。
裸のジョーの胸に、頬が当たる。

部屋の中に戻ろうとしたジョーは、窓枠にぶつかりそうになり、頭を屈めた。

不安定な姿勢に、私は慌ててジョーの首に手を回す。
ジョーが、微かに笑ったのが分かり、私は益々おとなしくするしかなかった。

首から肩にかけての筋肉が、こんもり盛り上がっていてびっくりする。
どこを触っていいのかも分からず、とりあえず掴まった姿勢から、ピクリとも動けやしない。

カチコチに固まってしまった私を気にもせず、ジョーは畳の上に私を寝かせると、縁側から手紙を持って来て、自分も隣に寝そべった。

「懐かしいな……」

私も昼間、ジョーから手紙を見せてもらったときに、恥ずかしくも懐かしく、嬉しかった。

自分で出した手紙は、二度と見ることがない。
手紙を受け取った方より、懐かしく感じるだろう。

それに、自分の書いたものが大切に読まれ、保管されていたというのは、それだけで胸が熱くなる。

手紙に見入るジョーの上半身は、湯上りの熱で輝いている。
ゴロリと仰向けに横たわったジョーに、私は見入ってしまった。
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