一途な小説家の初恋独占契約
ピッタリと身体にフィットするジャケットから想像はついていたけど、想像以上の逞しさだ。
ずっしりと盛り上がった肩や腕、みっちりと膨らんだ胸、がっちりと割れた腹筋。
そのまま水着のモデルにでもなれそうだ。

ううん、それよりもやっぱり、海外ロマンス小説の表紙がふさわしいかも。

日本語版の表紙は、きれいなイラストか女性モデルのロマンティックな表紙が多いけれど、原著はセクシーな男性が多いのだ。

「そんなに見られると恥ずかしくなってくるな」
「……ッ」

赤らんだ顔を両手で覆い、うつ伏せに突っ伏した私をジョーは笑う。

「お相子に、汐璃も見せてくれればいいのに」
「見せません!」
「僕にだけ見せてくれるなら、どれだけ薄着でも怒らないよ?」
「バカッ!」

ついに怒ってしまった。
ジョーは、私の感情を揺さぶる天才だ。

やっぱり、作家だから?
女性向けの恋愛小説を書く小説家からしたら、私の心を動かすなんて簡単なことなのかな。

そう思うと、翻弄されている自分の方がバカみたいだ。
途端に胸の中が涼しいような気がして、フルッと身体が震えた。

ジョーが、立ち上がる気配がする。

近くにいられても困るのに、いなくなると寂しい。

どうしよう。
呆れられちゃったのかな。

「……汐璃」
「きゃっ!」

いなくなったと思っていたジョーが、私に覆い被さる。

さっきより色々なところが密着していて、恥ずかしい。
ジョーの硬い身体に触れると、自分がいかにポヨポヨしてるか痛感させられる。

「な、何してるの?」
「寒いのかと思って」

さっき一度だけ震えたのを見てたの?

「だからって、くっつかないで!」
「オーケイ」

ジョーが離れてくれたので、少しだけ顔を上げる。
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