一途な小説家の初恋独占契約
隣に寝そべったジョーは、ブランケットを私に掛けてくれた。
そのまま、私を抱き寄せようとする。

「ありがとう……って、もう離れていいのよ!?」
「直接じゃないから、いいのかと思って」
「いいわけない!」
「オーケイ」

あてにならない「オーケイ」だ。
ジョーのオーケイと私のオーケイには、差が大きすぎる。

「キミの手紙も見る?」
「見たい!」

ブランケットと一緒に、私の書いた手紙も持って来てくれたようだ。

拙い文字が恥ずかしいけれど、この機会を逃せば、もう見ることもないだろう。

「初めの手紙はこれだ」
「私が書いたのは、これね。ええと……『はじめまして。私の名前は、シオリ クボタです。中学1年生です……』って、もうスペルが間違ってる!」

笑い出す私にジョーが見せたのは、愛しさに溢れた眼差しだった。

「僕は嬉しかったな。遠く離れた日本にいる女の子が、がんばって書いてくれたんだって思ったら、すごく嬉しかった」

慈愛に満ちた言葉に、胸がいっぱいになる。

「……私も嬉しかった。海を越えて、自分の書いた手紙が届いて、それに返事をくれただなんて。これでも、毎回辞書を引いて、一所懸命書いたの。一文書くのに、ものすごく悩んで、考えて……」
「分かってる」

その一言だけで、胸がいっぱいだった。
ジョーなら、分かってくれていると信じてた。
だから、続けてこられたのだ。

両手で抱えきれないほどの紙の束に、たくさんの想いを込めてきた。
私とジョーの10年間の歩みが詰まっている。

手紙を涙で濡らしてしまう……。

手紙を手放し、ブランケットで顔をくるみ、ミノムシみたいになった私の肩を、ジョーは優しく抱いてくれた。
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