一途な小説家の初恋独占契約
「取材ですね。何でも、次作は日本を舞台にしたいとか」
「ええ、そうなんです」
「窪田なら、いつもきちんと仕事をしているから、先生にお見せしても安心です。
それで、先生……もし、よろしければ各書店でサイン本を作ってくれたりなんかしませんか?」
「ご要望があるなら」
「ありがとうございます! 窪田、至急得意先に確認とって!」
「は、はい」

ちゃっかりサイン本まで強請っている。

ジョーが来日するって分かっていたのに、今までそういう話が出てこなかったってことは、事前にジョーが断っていたんじゃないのかな。

「ジョー、大丈夫? 嫌だったら断っていいのよ」
「構わないよ。僕は、汐璃の役に立てそう?」
「十分過ぎるほど。明日から、サイン会もあるんだから、疲れない程度でいいからね」

サイン本は、返品できないので、売れ残ってしまうと書店さんの負担になる。

『シークレットロマンス』はベストセラーだけど、昨年出版されたもので、残念ながらもう下火だ。
書店さんも、数はそれほど求めないだろう。

部屋にいたメンバーと課長で、各書店の客層や『シークレットロマンス』の売れ行きを分析して、サイン本を喜んでくれそうな書店さんを選び出す。
みんなで手分けして連絡を取ると、どのお店も歓迎してくれた。

その間、ジョーは、店頭に置くサイン色紙を作ってくれていた。

「ジョー、本当にありがとう」
「どういたしまして。その代わりに、僕はキミをランチに誘ってもいいのかな?」
「もちろん!」

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