一途な小説家の初恋独占契約
「汐璃、よく似合ってる」
「……ジョーも、見違えたね」

日系人とはいえ、背も高く、体格も良く、顔立ちもくっきりとしているジョーに、こんなに浴衣が似合うとは、正直想像していなかった。

「汐璃と並んで歩けるように、揃えてもらった」
「私に合わせてくれたの? 好きなのを選べば良かったのに」
「汐璃と似合うことが、僕の最良だから」
「また、そんなこと言って……」

恥ずかしがる私の横にジョーは並び、二人が入る鏡に見入って、満足気に微笑んだ。

「お二人は、よくお似合いですよ」

『お二人とも』じゃなくて、店員さんまでそんなことを言う。

プロが見立てたからか、二人の浴衣が並ぶと、誂えたようにしっくり来た。

美容師さんが、ジョーの髪も整えてくれる。
サッと櫛を通したくらいなのに、触れ合う距離に、なぜか心がザワッとする。

「汐璃。夜は、何を食べたい?」
「うん……」

スッと目を逸らした私に、ジョーは視線を送り続けている。
何気ないはずのその視線に耐え切れず、私は店内をうろうろした。

「近くにお薦めのお店はありますか?」
「色々ございますよ。このまま行かれるのでしたら、あまり改まった所でない方がよろしいでしょうね」
「そうなんですか?」
「ええ。浴衣は、略装ですからね」

ジョーと店員さんの話を聞き流している内に、いつのまにかジョーがすぐ傍に立った。

「他に欲しいものは?」
「ないよ」
「そろそろ行こうか」
「あ、お金……」
「もう支払いは済んだよ」

お店の人と美容師さんに見送られて、お店を出る。

「こんなに高いもの、払ってもらうわけにはいかないよ」
「汐璃の家に泊めてもらってるんだから、このくらい安いものだよ」
「そんなわけには……」

ジョーは、有無を言わさず、私の手を取ると歩き出す。

「せっかくだから、少し歩こうか」

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