一途な小説家の初恋独占契約
夜の銀座は、キラキラしていた。
人は多いのに、他の街と違って、どこか落ち着いている。

ブラブラとお店を覗き込みながら歩いていると、お祭の夜のような気がした。
はかないような、それでいてこの夜がどこまでも続いていくような。

中学生の夜、ジョーと砂浜を歩いていたときのような気持ちだ。

夕食は、銀座でおいしいデリを買って、家で食べることにした。
冷たいシャンパンに、フルーツ、生ハム、オリーブ、チーズを何種類も。

温かいものもあった方がいいと、ジョーはローストチキンを作ってくれた。
一緒に焼いた、たっぷりの野菜が色鮮やかだ。

スパイスを効かせたこのメニューは、ジョーの作品に出てきたものだ。
初めて自宅にヒロインを招いたヒーローが腕によりをかけて持て成すのだ。
何てことのないメニューだけれど、その裏でヒーローが込めたたくさんの愛情を、読者の私は知っている……。

縁側に二人で浴衣のまま並び、乾杯する。

「おいしいっ!」

喉の奥で弾ける炭酸に、心が浮き立つ。

「そうだ、写真……」

忘れないうちに、ジョーの写真を撮った。
被写体が良すぎるせいか、写真写りも抜群に良い。

思わず夢中になって上から下から、横からと撮っていると、ジョーも私を撮り出した。

「ダメ!」
「汐璃だけずるい」
「だって、顔が赤くなってると困るし」

シャンパンのせいで、薄っすら汗もかいている。

私が顔を隠しても気にせず撮るので、怒ってジョーに近づく。

「見せて! 消して!」
「やだよ」

背後から伸ばした私の腕を引き寄せ、ジョーは自撮り画面にしたタブレットで、二人の写真を撮った。

「あっ!」
「もう一枚……」
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