一途な小説家の初恋独占契約
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花火を終えて、お風呂に入っても、どこかふわふわしたような気持ちが続いている。
愛情深く、紳士的なジョーは、ジョーの描くヒーローそのものだ。
世界中の女性の憧れを体現したような彼が、私に恋を教えてと請い、一緒に過ごしている。
恋を教えるって、どんなことをすればいいんだろう。
それに、今日は寺下部長に会わなくて済んだけど、契約のこと……。
まだ、ジョーに何も聞けていない。
ジョーと一緒にいると、ドキドキしてしまって、うまく考えがまとまらない。
少し落ち着こうと、畳のある部屋に行く。
二階の和室はジョーが使っているから、今自由に使えるのは、一階の部屋だ。
昨夜と同じように、ジョーからの手紙を手に寝転がる。
それから、ジョーがサインしてくれた最新刊も。
「……汐璃」
「うわっ」
気づいたときには、ブランケットが降って来ていた。
つい夢中になって、ジョーが近づいてきていたのなんて、まるで気づかなかった。
慌てて立ち上がろうとする私を制して、ジョーが隣に寝転がる。
近い。
ゴロゴロと転がって離れようとすると、面白がってジョーまで転がる。
「……あ」
ついに部屋の隅まで追い詰められてしまった。
ブランケットが絡まった私は、腕を動かすことさえままならない。
「ごめん、ジョー。出られなくなっちゃった。手伝って」
ジョーは、私の顔にかかった髪を払うだけで、手を貸してはくれなかった。