キングの餌食になりまして。
「俺が、初対面の君に『メイクラブしよ』って言ったことあっただろ?」
そうだこのひと初対面からカオスだった。
「初対面に限らず言ってきましたよね」
「最初に俺に言われたときなんて答えたか覚えてる?」
「……?」
なんだっけ。断ったのは断ったよね?
「君はね。真面目な顔つきでこう言ったんだ。『メイクラブってどんなお仕事ですか』」
――!!
そうだっ……。最初は意味すらわからなかったんだ。
「あのときは驚いたよ。ボケにボケ返しされたもんだから……ははっ。思い出したらお腹いたい」
「恥ずかしい過去を掘り返すのやめてくれませんか」
そしてあたしはボケたんじゃない。真面目に答えた。
「なんで? こんなに面白いのに」
「どうせあたしは無知ですよ……!」
「いや、まあ、メイクラブなんて君くらいの子は知らなくて普通なんじゃないかな」
そんなこと言っても、たぶん年齢そこまで大きく違いませんよね……?
「『次に俺に逢うときまでの宿題ね』って言ったらちゃんと調べてきてたのもウケたよ」
「調べてビックリしましたけどね!!」
「ほんと……どんな顔して調べたんだろうと思うと面白すぎて。意味がわかった瞬間の君の顔、写真におさめたかったよ」
「ぜったいイヤです!」
「『あたしの仕事はメイクラブでなくベッドメイクです』って返しも座布団一枚って感じだったし。センスあるよ実知留ちゃん」
なんのセンスだ?
いや、なんのセンスであろうと別に欲しくない。