キングの餌食になりまして。


「君と過ごすそんな時間が、たまらなく楽しかったんだ」

「っ、そんな風に……思ってくれてたんですか」

「君へのセクハラは挨拶みたいなものだった」

「しれっとセクハラ認めないで下さい。セクハラが挨拶ってどうなんですか。ってかムードぶち壊しなんですけど」


 クスッと上品に笑うキングはなにを言っても悔しいくらい美しい。


「言葉の綾さ。俺のしたことはセクハラに相当しない。なぜなら君は喜んでいたから、なんの問題もない」

「どこが喜んでたんですか。ドン引きです」

「ドン引きと精神的苦痛は違うだろう?」

「……ああ言えばこう言うんですね」

「安心して。性的にからかうのは実知留限定だから」

「そんな限定、嬉しくありません……!」

「おかしいな。女の子って『特別扱い』好きだろ?」


 世にも奇妙な特別扱いですよそれは。

 ……って。


 この絡み、なんだかんだ楽しい。


「……ヘンタイセクハラキング」

「うるさいよ」


 ムギュっと頬をつままれる。


「そんな俺の『容姿』大好きなクセに」


――!?


「美しい俺を見て、ドキドキしてたのは誰?」

「なっ……」

「俺から誘惑されて。必死に流されないように平静を保つ君の姿。なかなかの見ものだったよ?」


(この人っ……全部わかってて……!!)


 意地悪な笑みにドキドキして仕方ない。

 やっぱりこの男はあたしの心を狂わせる天才だと思う。


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