キングの餌食になりまして。



 新しいオモチャを手に入れた子供のような顔であたしを見てくる。


「何色かな」


 ブラウスの一番上のボタンを、片手でいとも簡単に外してくる。

 細く長い指があまりにも美しくて、二つ、三つと開けて胸元に近づいてきたとき。不覚にもドキッとしてしまった。

 そんな自分に嫌悪感を抱き、唇を噛みしめる。


「なんで……」

「ん?」

「なんで、勢いでこんなことできるんですか」


 一方的にしてなにが楽しいんですか。

 それで興奮するっていうなら相当歪んでます。


「……信じられません」

「信じられないのはこっちの台詞だよ?」

「……?」

「この俺に迫られて拒絶反応示す女がいるなんてねぇ」


 そういって肩を摑まれた瞬間、身体がビクリと反応した。


「もしかして怖いの?」


 『そりゃあ初めてですから。めちゃくちゃ怖いです』
 なんて、言いたくない。

 言えばバカにされそうだし、自分のことをこの人に教えるのは負けてしまう気がしたから。


 黙っていると、京極さんが口を開いた。


「実知留ちゃんって不器用に生きてきたでしょ」


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