キングの餌食になりまして。



「言いたいことあるなら言いなよ」

「…………」

「言え」

「ちょ……」


 顔が近づいてくる。このままだと、またキスされかねない。


「せ、セクハラです!!」

「他には?」

「は?」

「俺になんの不満があるのか。聞かせてもらおう」


 それ言っちゃヤバイやつですよね?


「ほら。なんでも聞いてあげるから」


 いやそんな話よりなにより、おかしくないですかこの状況。なんの拷問ですか。もうクビでいいから、あたしを今すぐ解放して。


(言えば……解放されるの?)


「そ……その、果てしなく上から目線とか」

「だって俺、君の『果てしなく上』だし。いつから対等にモノを言えるくらい偉くなったんだい? 世間知らずなお嬢ちゃん」

「っ、それでも支配人とかは、ちゃんとあたしを一人の人間としてみてくれますよ。偉いからって、していいことと悪いことの区別をつけて欲しいです」

「……それから?」


 それから?


「掃除したばかりのベッドを汚そうって発想が……」

「発想が、なに?」

「狂ってます。二度手間って無駄すぎませんか」


 その分シーツを洗うための労力とか。水道代だってかかるし。ていうか、ここにすぐにまたお客様からの予約が入っているかもしれないし。


「あたし、お給料もらって働いてるんですから……! あなたと遊んでる暇、ないです!!」

「うん。それで?」


 なんで答えてるのにどんどん顔近づけてくるの?

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