キングの餌食になりまして。
このままキングの餌食にでもなってしまうのかと思っていたら、キングの口から出た言葉は意外なものだった。
「残念だけど、時間がきてしまった」
(……時間?)
「手荒なことしてごめんね。実知留ちゃん」
そういって、スーツの上着をそっとあたしにかけて立ち上がる。
「待っててね」と耳打ちすると、扉に向かって歩いていく。
「どこ行くんですか」
「お仕事だよ?」
「……あたし帰っちゃダメなんですか」
「ダメ」
解放されたわけじゃ、ないらしい……。
「ああ。この部屋なんだけど。掃除しなくていいから」
「え?」
「実知留ちゃんは、ここの従業員でもなんでもなくなったのに仕事するのおかしいでしょ」
そういわれて無職になってしまったことを改めて実感する。