キングの餌食になりまして。



「とりあえずシーツだけでも、かえます」

「シーツ交換も。アメニティの追加も。必要に応じて他の人にさせればいい。じゃんじゃん使うといい」


 なにいってんのこのひと。


「余計な仕事増やしてしまったんですから。やらせて下さい」


 きっとそれがあたしの最後の仕事になる。


「余計な仕事じゃないよ」

「……え?」

「この部屋、きちんととっておいたんだよねぇ」


(……んん?)


「だから、好きに使うといいよ。ご飯は部屋に運んできてもらえばいい。あとでまとめて払っておくからご自由に」

「…………」

「実知留ちゃんのこと、解雇っていったけど。自分からクビでいいって言ってくれたし依願退職にしてあげる」

「……イガンタイショク?」

「寿退社おめでとう」


――!?


「それじゃ。続きはまたあとで」

「なっ……続きって……?」

「クレーム対応」


 だ……

 だからあたしは、クレーマーじゃない!!!


「いいね。そういう顔。もっとじっくり見せて」

「……性悪キングめ」

「嬉しいよ。名字じゃなくて、キングって呼んでもらえて」


 キングは果てしなく前向きらしい。

 てか。あの。


 寿退社……とは?


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