キングの餌食になりまして。
支配人の思いつきで、部屋に料理を運んでもらうことになった。
「いただきます」
お箸を持ち食事に手をつける支配人。
それをみて、あたしもお箸を手に持つ。
「いただきます……!」
さっきはビックリした。
手を握られたり、涙をふかれたり……。
支配人ってかなり奥手そうに見えて凄く女の子に慣れてたりするのかな!?
それとも、ただの親切心から、ああいうことしたのかな。
「奏に誘惑されました?」
(……!?)
ゴホ、と蒸せてしまい
「大丈夫ですか」水の入ったグラスを差し出された。
「ありがとうございま……」
受け取ろうとした、そのとき。
「わっ……!」
手元が狂い、グラスが倒れ――水が溢れた。
「すみません……! ふきん持ってきます」
「それより槇さん、服が」
言われてズボンが濡れたことに気づく。
「ああ……」
ベトベトして気持ちが悪いが、そんなことより。
「支配人は濡れませんでした?」
「私は平気です」
「だったら良かったです!」
「……あなたは、いつも人のことばかり気にしていますね」
「えっ……と……?」
支配人がなにか囁いたけど聞き取れなかった。
「はやく脱いだ方がいいですね」
(……へ?)