キングの餌食になりまして。
あたしは利用してくれたお客さんが快適に過ごせたらいいなって思いながら働いてきた。
ベッドメイクなんて誰がやっても同じだって思われるかもしれない。ちょっとくらい手を抜いても気づかれないかもしれない。
それでも誇りを持って働いてきた。
その仕事が、もう、できないんだよね――。
*
ソファにかけ、ぼーっと外の景色を眺めていると支配人が戻ってきた。
「お待たせしました」
「いえっ……! わざわざありがとうございます」
立ち上がりズボンを受け取ろうとして、ひょいとかわされた。
(……?)
「まぁ、座ってください」
「…………」
「聞かせてもらいましょうかね。泣いていた理由(ワケ)を」
「あ……」
支配人は、あたしに寄り添おうとしてくれている。
上司として。責任者として。
その気遣いが嬉しい反面、この優しさは、けっして個人的に向けられるものじゃないんだとそう思うと、なんだか苦しくなった。
バスローブをギュッとつかむ。
落ち着け、あたし。