キングの餌食になりまして。
「京極さん、いつも暇そうに見えたのに……。支配人の方が何倍も働いてますよね?」
「はは。そんなこと、本人には絶対に言えませんね?」
「……!! これ、内緒でお願いしますね!?」
「はい。勿論ですよ」
支配人が、眼鏡を外しテーブルに置く。
いつもと雰囲気の違う横顔に、思わずドキリとした。
つくづく、あたしは顔立ちのいい男に弱いが……。
支配人の場合はキングと違って中身までイケメンなのでドキドキしない方がおかしいというものだ。
よく考えればこの状況、すごいよね。
ホテルの一室のソファで支配人と隣同士……。
って、変に意識してどうするのあたし!?
「どうしました?……私の顔になにかついています?」
じっと見つめられる。
「い、いえ……」
あなたが綺麗だなと思っただけです。ハイ。
「奏は、槇さんには執拗にかまっていますよねぇ」
(あたしには……?)
「いや、あのひと、女好きなだけですよ!」
別にあたし限定ってわけじゃない。
「……アイツに泣かされる子は幾度となく見たことがありますが。まさか、槇さんのことも泣かせちゃうなんて」
もしかして、さっきの『また』って……。
あたしが辞めさせられた話を聞いたときのアレって、『また女を泣かせて』って言いたかったのかな。
「本当のアイツはね。女性が嫌いなんです」