キングの餌食になりまして。



「あのっ……近――」


 近すぎると言おうとして、言えなかった。

 唇に柔らかいものがあたり塞がれてしまったから――。


 頭が真っ白になる。


「なんで……キスなんかっ……」

「実知留さん」


 突然のキスと。ふいに名前で呼ばれたのとで、いっぱいいっぱいになる。


「っ、あの、」

「どこまで仕込まれましたか。奏に」

「へっ……」


 シコマレタ……?


「私が上書きしても?」


(えぇぇええ!?)


「そんな……仕込まれてなんてないです。キスは、されました……が」

「キスだけですか?」

「胸を、少し、触られて……でも、一線は越えてない……です! 初めては好きな人とがいいので」


 って。なんのアピールしてるのあたし!?


「だったら私としましょうよ」

「えぇっ……なんで……?」

「好きだからです。実知留さんが」

「……!?」


 するりとバスローブの紐がほどかれる。


「ちょ……待っ、」

「優しくしますから」

「こんなこと……い、いきなりは……」

「すみません。だけど私も、余裕なくて」

「余裕?」

「正直……すごく焦ってます」


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