キングの餌食になりまして。
――ガチャ
突然、扉が開く音がした。足音が近づいてくる。
「おかしいですねぇ。鍵はここにあるのに」
と、いうことは。
ここに強引に入ることが、できるのは……。
「律、なんでここにいるの」
やってきたのは――キングだった。
キングが、戻ってきたんだ。
「おや、奏。今夜は遅くなるんじゃなかったのか?」
フッと笑う支配人の顔は、なんだかあたしの知ってる支配人とは雰囲気が違う。幼なじみだから……?
「そんなことより実知留ちゃん、その格好」
「あ。いや。これは……」
バスローブのほどかれたひもを慌てて縛る。
ズボンを濡らしてしまいまして。
まぁ、もう乾かしてもらったんですけど。
断じて昼間からやらしいことをしたとか。
そういうわけじゃなくってですね。
キスで止まりましたからね……!?
「……抱かれたの?」
――!
京極奏の顔がこれまで見たことないくらい真面目な顔つきになり、緊張が走る。
抱かれてなんていない。だけど、口が開かない。
即答できなかったのは……。
「実知留ちゃん。律としたの?」
キングが泣きそうな子供みたいに見えたから。
「ああ。そうだ」
――え……?
「俺たちは、そのベッドで、愛し合った」
(支配人……?)
どうして、そんな嘘を……つくんですか?