キングの餌食になりまして。



 ズキッと心が痛んだのは、その背中がとても寂しげに見えたから。


(なんで……?)


 あなたは、なんでも手に入れられる、無敵という言葉がお似合いな男で。


 あたしなんてオモチャのひとつで。

 失ってもダメージなんてないはず。


 なのに、そんなに悲しそうにしないで下さいよ――。


「幸せになってね」

「え……」


 京極さんが、部屋から出て行った。

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