キングの餌食になりまして。



 向けられるのは、見たこともない冷たい目。眼鏡の奥で鋭く光っているそれは刃物のよう。


「いいか。奏がこのホテルから出て行ったら頃合いを見計らってお前も消えろ」


(なに……言ってるの……?)


「まったく。奏のやつ血迷いやがって。キングたる男がこんなガキに入れ込むなんて」

「律さ、」

「気安く呼ぶな」


――心が、裂けてしまいそう……。


 あたしに傍にいて欲しいって。

 愛してるって。

 そう、言ってくれたのに……。


「なんだその顔は」

「嘘、ついたんですか」

「本気で俺に惚れられたとでも思ったか?」

「……な……」

「奏がお前みたいな貧乏娘に手を出す前に引き離せて良かったよ」


 そんな……。

 そんな……!!


「アイツはもう俺たちの仲には入ってこない。お前と俺の幸せを願ってアメリカにたつ」

「……っ、」

「シンデレラストーリーは、ここでお終いだ」


 支配人は……。

 京極さんとあたしが近づかないように。


――キングと庶民を引き離すために、あたしに甘い言葉をかけていたの?

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