キングの餌食になりまして。


 京極奏が、純真――?


「ハッキリ拒絶してよく女に泣かれてる」

「拒絶……?」

「なんだ。奏が女を寄せ付けないところは想像ができないか?」

「……はい」

「あいつは滅多と女に興味を示さない」


 それは、あたしの抱く京極奏のイメージとは真逆のものだった。


 手当り次第女に手を出し甘いマスクで虜にしてしまう……。


 それが、キングでしょう――?


「それじゃあ『京極奏が来る者拒まずなプレイボーイ』って噂は……」

「そんな噂あったかな?」


 にこりと穏やかに微笑む支配人をみて、ゾクリと寒気がする。


「なに言って……だって……」


 あたしが、このホテルに入ったとき。

 キングから初めて絡まれたあと。


『うちのキングは節操ないので。
 気をつけて下さいね、槇さん』


――あなたが、あたしに、そう教えたんじゃないですかっ……。


 京極奏の言葉を鵜呑みにするな、と。

 プライベートでは関わらない方がいいと。


「……あれは、嘘だったんですか?」

「なんのことか。さっぱりわからないな」


 こっちを向いた支配人。

 あんなに綺麗に見えた顔が――今は恐ろしい。


 手が。身体が。……震えてきた。

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