キングの餌食になりまして。



「また、アンタぁ?」


 眉をこれでもかというくらい釣り上げてあたしを睨みつけるのは、中原美香。メイクもネイルもバッチリな、女子力高めの『THE都会の女』というイメージの25歳。


 ここ、『B.C.HOTEL TOKYO』のフロントで働く彼女はいつだって華やかな当ホテルの顔。


 首元には上品な赤いスカーフを巻き、最大の武器は天下無敵の営業スマイル。また、バイリンガルな彼女は外国人のお客様もスムーズに応対できるのだから、あたしに勝てる要素などひとつもないのだけれど――。


「どうしてアンタが京極さんから直々に指名されんのよ。どうやって取り入ったの?」


 そんな彼女が今まさにあたしの前で鬼瓦みたいな顔をしている(本人には絶対に言えない)のだから、恋って恐ろしいなと思う。


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