キングの餌食になりまして。
「それ……どういう……」
ふう、と深々に煙を吐く支配人。
「これまで奏は付き合う相手を選んできた。……いいや、選ばせてきた。上流階級の女のみに。相手がそれなりの身分なら『過ち』が起きてもなんら問題ないからな」
「……?」
「あいつもまだまだ若い。そういう“欲”もあるだろうから。ただ、間違ってもお前みたいな貧乏人なんて関わらせたことがないし。させるつもりもない」
その話を信じるなら、京極さんは自由に恋愛できないわけじゃないけど条件つきで恋をしてきたことになる。
身分が違いすぎてあまり想像がつかないし、口出しできる立場でもなんでもない。
だけどそれって、すごく窮屈そうだ。
「奏の亡くなった父と俺は仲が良かった。約束したんだ。アイツを立派な男にすると。変な虫をつけてたまるか」
たとえ、そうだとしても……。
「支配人は、それで京極さんを守ってるつもりですか」
「つもりもなにも。守ってる」
――本当に……?
「……正しいとは思えません」
「なんだと?」
「支配人は京極さんのこと、傷つけてます」
「どこが」
「さっきこの部屋を出ていった京極さんの顔を見ましたか?」
「…………」
「彼は、とても……寂しげでした」
「そんなもの。新境地で仕事をしていたら忘れるさ」