キングの餌食になりまして。



 京極さんの中にあたしへの想いがあるの?

 ……それを、忘れてしまうの?


 支配人に騙されたことより、去りゆく京極さんのことで頭がいっぱいになる。


 ねえ、キング。
 あなたはどんな気持ちであたしから離れたんですか……?


「それからひとつ。大きな勘違いをしているようだが、俺じゃないよ。お前を拾ったのは」


――支配人じゃない……?


「俺はお前を雇う気はなかった」


 でも、面接してくれたのは支配人で。

 採用されてから面倒見てくれたのも――傍で支えてくれたのも、支配人だった。


「だったら、誰があたしを雇ってくれたんです?」

「はっ。そんなの誰でもいいだろ」

「よくない!」


 あたしが恩人だと思っていた支配人は
 恩人じゃなかった……。


「頼まれたんだよ。お前を採用してやれと」

「え?」

「自分は忙しいから。お前が不自由なく暮らせるように、俺がサポートしてやれと命令を受けた」


 あたしのために、支配人に、そんなことを言ってくれた人がいるの?


「会いたいです……そのひとに」

「お前、そいつんとこ行って俺にしたみたいなことするのか?」

「は……?」

「『恩』を『身体』で返すのか?」

「……っ、違……ただ、あたしは会ってお礼が言いいたいだけです」


 ここで働く機会を与えてくれたこと。

 短い間だったけど、やり甲斐のある仕事をさせてもらえたことのお礼が言いたい。


 そして、謝りたい。

 ここから去ることを――。


「……会わせるわけないだろ?」


(……?)


「せっかく上手く引き離せたのに」

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