キングの餌食になりまして。



「知ってどうする」

「どうも……できない……けど」


 京極さんが、わからない。

 あのひとはなにを考えてるの?


「……いいだろう。教えてやる」


 支配人がポケットから取り出した携帯灰皿にタバコを押し付ける。


「ただし。奏の前に二度と姿を現せないように、お前のことめちゃくちゃにしてからな」


 腕を引かれ向かった先は――ベッド。


「やめ……」


 押し倒し、覆いかぶさり、あたしの口を手で塞いでくる。


「いいか。大きな声だすなよ。お前の『恩人』に迷惑かけたくなければ」


 離して。いやだ。こんなの……!!


「あなたのこと信じてたのに、」

「信じてたなんて――都合のいい言葉で、お前の理想を俺に押し付けるな」


 ひとを信じちゃいけないの?


「これに懲りたら他人のことは簡単に信用しないことだ。この世界にはお前の知らない汚れたものがたくさんあるってこと、身を持って教えてやる」


 見えていたのは、キラキラした世界でもなんでもなかった。


 初めてこのホテルに足を踏み入れたとき。

 ここも。ここにいる人たちも。

 みんながみんな、輝いて見えたのに。


 全部幻想だったのかな――。



< 65 / 112 >

この作品をシェア

pagetop