キングの餌食になりまして。
ギュッと強く抱きしめられたあと、「ちょっと待っててね」そう言って身体を離し、支配人に近づいていく京極さん。
投げ飛ばされたときに落ちた眼鏡を拾おうとしていた支配人だったが――。
「俺がお前の目論みに気づいてないとでも思った?」
バキ――っと、音がした。
京極さんが眼鏡を踏み潰したからだ。
レンズが割れ、フレームが折れた。
「ついでにその手も同じように踏み潰してやりたい。実知留ちゃんに触れた感覚、忘れちゃうくらい」
キングから凄まじい殺気を感じる。
「……帰ってくんのはえーよ、キング」
平静を保ち、怯む様子は見せない支配人。
だけど少し顔が引きつっていることからあまり余裕はないように見える。
「君の下手な芝居にのっかるのはここまでだ」
「奏、」
かがむと支配人の髪を鷲掴みにし、
「ボコボコにしてやりたい」
――ギロっと、睨みつけた。
それは、あたしに一度向けられたヘビのような目と比べものにならないくらい高圧的な視線で。自分が向けられているわけでもないのにこっちまで萎縮してしまいそうになる。