キングの餌食になりまして。
「なんで、そんな女がいいんだ……家柄もよくなく、可愛げもない女が」
床に膝をつき、悔しそうにしている支配人。
「たしかに実知留ちゃんは……少々躾が必要だよ?」
その言葉にゾクリとさせられる。
「……でもね。こんなに可愛い子、見たことない」
(京極さんっ……)
「だから可愛げがないなんて、言わせない。もっとも……この子の可愛さなんて俺だけが知っていればいいよ。聞かれても教えてやらない」
「一時的な気の迷いで人生を台無しにする気か」
「台無しになんてならないから」
「お前はなにもわかっていない。その女と一緒になってなんのメリットが――」
「律」
あんなに冷たい顔をしていたキングが、穏やかに微笑んだ。
「理屈じゃないんだよ。人を好きになるって」