キングの餌食になりまして。



「なんで、そんな女がいいんだ……家柄もよくなく、可愛げもない女が」


 床に膝をつき、悔しそうにしている支配人。


「たしかに実知留ちゃんは……少々躾が必要だよ?」


 その言葉にゾクリとさせられる。


「……でもね。こんなに可愛い子、見たことない」


(京極さんっ……)


「だから可愛げがないなんて、言わせない。もっとも……この子の可愛さなんて俺だけが知っていればいいよ。聞かれても教えてやらない」

「一時的な気の迷いで人生を台無しにする気か」

「台無しになんてならないから」

「お前はなにもわかっていない。その女と一緒になってなんのメリットが――」

「律」


 あんなに冷たい顔をしていたキングが、穏やかに微笑んだ。


「理屈じゃないんだよ。人を好きになるって」

< 68 / 112 >

この作品をシェア

pagetop