キングの餌食になりまして。


 京極奏は本当に美しい。

 バスローブでソファにかけワインを飲んでいると、なんとも絵になる。


「キャラ作りしてないと身体がいくつあっても足りないんだよね。モテすぎるからさぁ」


 ……お願いだから黙ってくれ。


「今、演技する必要もないですよね?」

「実知留ちゃんのツッコミが面白いから、つい」

「キモいと言われて面白がらないで下さい」


 京極奏のこの猫かぶりは、王子キャラを貫くための手法だという。

 たとえば女性からアプローチされても『私はみんなのものだからねぇ。他の姫を悲しませたくはないんだ』でオッケーなのがすごいラクとかなんとか。

 それでもしつこい女性に関してはバッサリ切るみたい。


 あたかも自分のためみたいに語ってるが。

 それって、相手の女性を傷つけないためにもなるよね。

 遠回しに『本命は作らない』とアピールできるし、バッサリ切ることに関しては、中途半端に期待を持たせてしまうならいっそハッキリ拒絶された方が次の恋に進めやすいこともあるから。


 本当のキングは、もしかしたら、とても優しい人なんじゃ……。


「本当に生意気な小娘だ。この私がいなければ、君みたいな凡人がここを利用することなんてできないというのに。感謝したまえ」

「結構素ですよね?」


 やっぱりムカつく男だ。


「そうかもね。なにせ俺はホテル王だから」


 自分で言っちゃったよ。

 まったく……。

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