キングの餌食になりまして。
【幸せになってね】
あのときの、京極さんの言葉は。
あたしへの“拒絶”だったの……?
「君は、俺を捨てた」
「ごめんなさいっ……」
「俺が待てと言った場所で。律に抱かれた」
「それはっ……」
「ああ。実際のところ、抱かれてはなかった。他人の吐く嘘なんて、いつもなら簡単に見破ることができるのに。あのときは……頭が真っ白になってなにも考えられなくなった。あんなの初めてだった」
【俺たちは、このベッドで、愛し合った】
あんなもの、ハッタリだ。
……だけど。
あのときのあたしが京極さんを裏切る行為をしていたことには違いなかった。
『待て』と言われた場所に支配人を招き、あんなことになった。
支配人の言葉は信じたのに。
京極さんの言葉は、信じてあげられなかった。
「律の前ではだけたバスローブを着た君を見たとき、心底絶望したよ。……ああ、選ばれたのは俺じゃないんだなと」
ボロボロと涙が流れてきた。
京極さんのこと、深く傷つけてしまった。
そんなあたしが泣く資格なんてないのに。
涙が、止まらないっ……。
「律の言葉に頬を赤く染める君なんて俺は見たくなかった。いっそ……律に捨てられて。ボロボロになればいいとそう思った」