キングの餌食になりまして。
どうして気づかなかったんだろう。
このひとの、本音に。
どうして……。
どうしてっ……。
「泣かないで。実知留」
優しく手で涙を拭われる。
「自分を責めちゃだめだ」
「……え……?」
「気づいたんだ。そんなにイラついたのも、悔しくなって見捨ててやりたくなったのも。俺が、狂わしいほど実知留を愛してしまっていたからだと」
京極さんっ……。
「だいたい君を愛してなきゃ。君のご両親に頭さげて。パスポートだってもらってきてない」
(え……?)
「俺はね。実知留が悲しむ未来なんてきてほしくなかった。なにがあっても、どんなときも、君を守るのは他の誰でもないこの俺だ」
「ごめんなさい……あたし、」
「謝らなくていい。君はなにも悪くない」
「そんなことない……! バカだった」
「バカは俺だ。君を謀るようなことばかりして本当の気持ちを隠し続けていた。そんな俺が君に選ばれるわけなかったんだ」
(……はかるようなこと?)
「だけどもう隠しはしない。素直になると決めた。だから俺のこと信じて欲しい」
「信じるよ……!」
「ありがとう」
「支配人ばかり信じて、ごめんなさい」
「それも悪くない。律に実知留を任せたのは俺だから。律の躾が足りなかった俺の責任だ」
そうやってなにもかも自分のせいにしないで……。
「君は、君のままでいてくれたらいい。変わる必要もない」
「京極さ、」
言葉の続きを止めるようにキスで口を塞がれた。