キングの餌食になりまして。



「伝えたいことはたくさんある。実知留の話だって、いっぱい聞いてあげたい。なんなら夜通し、腕枕でもしながら」

「うん」

「だけど、今は――」


 ゆっくりとベッドに押し倒される。


「今だけは、自分を抑えられそうにない」


 不器用だけど大きな愛を向けられて、あたしが一緒にいたいのは紛れもなく彼なのだと思い知った。


 あたしが欲しいですかって。

 聞かなくても。返事されなくてもわかる。


 欲しがる顔、してるから。

 京極さんがあたしを求めてる……。


「……っ、抑えなくていいよ」


――もう、迷わない。


 間違えない。見失わない。

 大好きな人のこと。


 大きな手が伸びてきて、はらりとバスローブがめくられる。


「実知留、綺麗」

 
 そう言ってあたしを見下ろすあなたが美しい。


「……あんまり、見ないでください」

「だめ。全部見せて」


 唇と、唇。

 素肌と素肌が、重なる――。


「京極さんっ……」 

「名前で呼んでよ。君も“京極さん”になるんだから」


――京極実知留……。


「……なんか、カッコイイですね。あたしの名前に京極って名字がつくと」

「そうだね」

「……奏さん」

「もっと呼んで」

「かなで、さん」

「実知留」


 名前を呼ぶたびに

 名前を呼ばれるたびに

 “好き”が、増していく――。


「君を俺にちょうだい」

< 96 / 112 >

この作品をシェア

pagetop