キングの餌食になりまして。


「……なんだか、ものすごく不思議な気分です」

「不思議?」

「こうしていられることが」


 もしも、大学生活を続けていたら。

 もしも、履歴書を見つけてもらえなかったら。


 奏さんと知り合うことはなかった。


 すれ違ったままサヨナラしていたら、


 そっと抱きしめられることの嬉しさとか。

 愛する人と触れあえる悦びとか。


 そんなこと、なんにも知らないままだった。


「巡り合わせって……奇跡の連続ですね?」

「ああ、そうだね」

「…………」


 いや、そんなシンプルな返事も。

 澄ました顔も。

 貴方らしくない……!!


「あたし達が出会えたのって。ほんとに偶然じゃないですか」

「それを人は『運命』だとか『赤い糸で結ばれている』なんていうんだよ」


 そんなロマンチックなこと言えたんですね。


「俺の小指と実知留ちゃんの小指には、きっと、運命の赤い糸が繋がってるね」


 小指を小指に絡ませてくる。

 ちょっとキザだけどもの凄くキュンときた今の。


「この糸はね。永遠に切れることないよ」


 イケメン発言は、反応に困ります。

 やっぱりちょっと残念なくらいが接しやすいな……?


「もし君が切り離しても俺が結びなおそっと」


 ん?


「切り離そうとする他人が現れたら……うん。消しちゃおう」


 いやいやそれは怖いです。

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