溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
私の涙が零れ落ちないように、そっと指のはらで涙を拭ったルイは、私を優しく包み込んだ。

父を知ってると言うことがわかったせいか、抱き締められることを拒まなかった。

むしろしっかり受け入れて、ルイの胸に顔を埋めた。

ルイは、心の温かい人。

この胸の中は、とても落ち着く。

しばらくその温かさに包まれて安心していると、ルイの顔が、私の顔に近づいて、ハッとした。

そして両手でグイッとルイの顔を押した。

「…何してるんですか?」
「…美々を甘やかそうと思って」

「…っ?!キスは甘やかしになりません!失礼します!」

そう言い捨てると、スクッと立ち上がり、ルイから逃げ出した。

秘書はもう帰っていた。

ロビーの受付嬢も居なくて、社員もほぼいなくて。

警備員が見回りをしていた。

会社の中には、私とルイがいただけ。

密室で二人きりなんてよくなれたものだ。

しかも、抱き締められて。

ルイに出会ってからの私はどうかしてる。

…私は、自転車に飛び乗ると、急いで自宅に戻った。

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