溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
私がいなくなった社長室の中。

ルイは、ソファーの背にもたれ掛かり、大きな溜め息をついた。

…やはり、思い出さない。

いや、思い出す方が奇跡だ。

たった3才の女の子に、プロポーズしたことなんて、覚えているわけがない。

覚えていたところで、とっくに時効だ。

もしくは、ただの、戯れ言だと思うに違いない。

…美々のことは、諦めた方がいいのか?

愛らしかった美々が、綺麗な女性へと変わった今、そう簡単に諦められそうになかった。

色々考えてると、携帯がなり、着信相手も見ずに、それに出た。

「…もしもし」
「…美々に変なことはしてないだろうな?」

「…してない…ことはない」
「…ルイ、お前」

電話の相手は、シェフだった。二人きりなのが心配で、暴走しそうなルイが気がかりで、電話をして来たのだ。

美々は、シェフにとって、目に入れても痛くないほどの愛弟子だ。

いや、娘のように可愛がっていた。

「…美々は、抱き締めたけど、嫌がらなかったよ」

ルイの言葉に、シェフは驚いた。

「…でも、キスは全力で拒否られた」
「…バカ野郎!気が早いって言ってるだろ?そんなに焦るなら、もうルイに、美々は近づかせないからな!」

そのまま電話は切れてしまった。
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