溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
料理もデザートも、とても好評で、どんどんなくなっていく。

厨房の中も、慌ただしかった。

自分が体調が悪いことも忘れるほど、集中していた。

初めて任された大きな仕事。失敗だけはしたくなかった。

…。

慌ただしかった時間はあっという間にすぎ、後片付けに入っていく。

会場の中は、会場スタッフや私たちだけ。

無事に終わってホッとした瞬間、張り詰めた糸が、プッっと切れた。

その場に倒れこむ私を、誰かがしっかり支えてくれた。

「…美々!!…貴方は」

倒れた私に駆け寄ってきたのは楓。

私を咄嗟に支えてくれたのは。

「…後片付けはお願いしても宜しいですよね?」
「…勿論です。ですが、美々が」

「…美々は、私が、連れていきます」

そう言って、軽々と私を抱き上げたのは。

「…北条社長。美々をとは」
「…美々は、私にとって、大事な人です」

それ以上何も言わず、ルイは、私を連れ、会場の最上階にあるスイートルームへ。

ルイは、疲れきって起きることのない私をバスローブに着替えさせると、ベッドに寝かせ、布団を被せた。

そしてその傍らに座ると、私の頭を優しく撫でる。


「…無理をさせたんだね…ごめんね、美々」

そう言うと、私のおでこにそっと口づけた。

「…ゆっくり休んで」

ルイに言われたことも、されたことも、なんにも気づかないほど、深い眠りについていた私は、次の日の昼、目覚めと同時に叫ぶことになる。
< 43 / 72 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop