溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
「…んー…よく寝た」

カーテンから、うっすら明るい日が差し、私は目を覚ました。

目を擦りながら、ゆっくり片目を開けて固まる。

布団の中に、楓がいる。

布団なんて、これしかないんだけど、…帰っているものだと思っていたのに、いるなんて。

心配で付き添ってくれていたんだろうけど…

お兄ちゃんのような人だけど、流石にこれは、いけないと思う。

楓だって『大人の男』なのだから。

私は慌ててベッドから抜け出そうとして、手を滑らせ、ベッドの下へまっ逆さま。

…痛い…いや痛くない。

楓が私と一緒に落ちて、私は楓の上に乗っかる形になった。

「…お前…危ないな」
「…ごめんなさ…だって、楓さんが、一緒に寝てるから驚いて」

「…ゴメン、ゴメン、寒くてさ」

けたけたと笑いながら言う楓に、なんだか力が抜けた。

「…で、熱は…うん、もう、ほとんどないみたいだな。ご飯食べれそう?」

「…はい、もう大丈夫です。色々ありがとうございました」
「…いいよ、こんな時は、頼ってよ」

…それから、朝食を二人で食べ、楓は帰っていった。

その日の夜、新たな客が来ることも知らず、私は明日から出勤する為に、身の回りのことをしていた。
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