溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
片言の英語で必死に会話しながら、たまにはジョークを言い、笑顔を見せる私を、優しい眼差しで見つめる楓。

…ニューヨークに立つ日、私は何度も携帯を見ていた。

鳴りもしないのに、何度も何度も。

結局、携帯は鳴ること無く、飛行機に乗った私は、楓に気づかれないように、声を殺して泣いていた。

ルイが空港に迎えに来てくれるものだと、どこかで期待していたせいかもしれない。

その淡い期待は、まんまと潰され、ガラスの心は、砕けてしまった。

…声を殺して泣いていたつもりだったが、直ぐとなりにいる楓が、気づかないわけがなかった。

私の肩を抱き寄せて、泣いてる私を慰めてくれた。

ニューヨークに着いてから、間もなくして仕事を始めたものの、心から笑うことなんて出来なくて、ただただ仕事に没頭した。

半年が過ぎ、気付けば、ニューヨークに来て、一年が過ぎていた。

時間が経てば、少しは笑えるようになった。

そうなれたのは、楓が片時も離れなかったから。

隣でずっと笑っていてくれたから。

私に好きだなんて言わないけれど、楓の気持ちはひしひしと伝わっていた。

その気持ちに答えなければと思うけれど、ルイへの気持ちがまだまだ無くならない。

忘れようとすればするほど、想いが溢れだした。

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