溺愛プリンス~秘密のフィアンセ~
そんな私の手の甲に、ルイは優しく口付けた。

それにハッとした私は、勢いよく両手を引っ込めて、ルイを睨んでしまった。

ルイは悲しげな笑みを浮かべて。

「…驚かせてしまってすみません」
「…私を誰かの代わりにしてるんですか?今日はお二人のご予約でした。相手の方がこられないからって、私にそんなこと…バカにしないでください!」

そう言い捨てると、店内に逃げ込んだ。

店内では、シェフが片付けをしていて、駆け込んできた私に驚いている。

「…美々、どうした?って、おい、美々!」

シェフの静止も聞かず、私は更衣室に入っていった。




…それからまもなくして、ルイが店内に戻ってきた。

シェフは少し、怒った顔をして、ルイに近づくなり言った。

「…美々になんかしたのか?」
「…プロポーズ」

ルイの答えに、シェフは大きな溜め息をついた。

「…気の早い」
「…美々は」

「…ルイ?」
「…何も、覚えていなかった」

そう言って、シュンとしたルイに、シェフは肩を叩いた。

「…そう焦るな。…大体、何年前の話だ?美々の昔の年を考えてみろ。覚えているわけがないだろ?」
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