素敵な王子様の育てかた。

……やはり調子が狂う。

今までの勢いはどこへ行ったのだろう、あれだけ強い口調と態度で接していたというのに、今は容易くそんな態度でいくことができない。

きっと外見が変わったこともさることながら、その変化ゆえ、今までは感じることがなかった王子としての威厳が出てきたからだろう。

やはり彼は王子なのだと、思い知らされる。

私は侍女という立場だから辛うじて声をかけられるだけであり、本来なら話すことはおろか、会うこともできないほど、高い位置にいるお方なのだ。

私に向けられた笑顔だって、もう少しすればこの国の民に向けられ、さしては隣に立つであろう特別な女性に対してのものになる。

私はそんなふたりの間で育つ愛を、端でただ見守るだけの存在となるのだ。


そう考えたら、また胸の辺りがつきん、と痛んだ。

「やだ、また……」

思わず胸元を手で押さえる。

昨日の夜、無理をしてしまったからかしら?
やっぱり体調が万全ではないみたい。

……変な病気でなければいいけど。

一抹の不安を抱えながらも、気持ちを切り替え厨房へと向かった。
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