素敵な王子様の育てかた。
その日の夜も、本当なら早めに休むべきところを、どうしても我慢が出来ずに夜更しして読み進めた。
昨日とは打って変わって物語に集中することができたが、作中に出てくる王子がどうしてもライト王子と被ってしまって、妙に恥ずかしさが襲う。
話の大まかな内容としては、ある令嬢が王子に見初められ、戸惑いながらもその思いに応える……といった流れのようだが、結末まで読み進めていないから定かではない。
けれど冒頭、引っ込み思案な王子が徐々に積極的になって、主人公の令嬢を惑わせていく辺り、どうもライト王子と被ってしまって仕方ないのだ。
中盤辺りに差し掛かった頃、王子の令嬢に対する求愛の猛攻シーンに、私はたまらずしおりを挟んで、束を重ね戻した。
ダメだわ、これ以上読み進められない。
王子の顔が脳裏に焼きついて離れないし、このお話の王子が紡ぐ甘い一言も、すべてライト王子の声で変換されて再生されるから、まるで私が王子に言い寄られているような感覚に陥ってしまう。
これはただのお伽噺。
架空の物語。
なのに、心臓は早鐘を打ち鳴らして、汗が滲むほどに身体の体温も上がってしまっているのはなぜ?
王子が私にこんな甘い台詞なんて、囁くことなどないのに。