素敵な王子様の育てかた。
「はあ……」
思わずため息を零した。
王子にも言ったが、元々といえば私に異性に対しての耐性がないのが問題なんだわ。
物語の中にいる男性がすべてだったから、生身の異性と碌に付き合いもしなかったんだもの。
"夢見る乙女"なんて響きはいいけど、実際はただの世間知らずのお嬢様。
本来貴族令嬢として生まれた以上は、異性との駆け引きを上手くやりこなさなければならない。
それは自分のためでもあるし、敷いては家のためでもある。
それぞれの未来の繁栄を思えば、身につけていかなければいけないスキルなのに、逃げてきたのは私。
今日の王子のやりとりなんて、この話の中のに比べたら全然大したものではないのに、こうも王子と重ねて見えてしまうのは、その部分を怠ってしまったせいなのよね。
「これから先、大丈夫かしら」
いまさらになって、そんな弱音が漏れ出てしまう。
悩んだって仕方ないのは分かっているが。
……結局、そのことが頭から離れず、なかなか眠れずに朝を迎えてしまった。
昨日の疲れをそのまま引きずって、体調はすこぶる不調。
鏡に映った自分の顔は酷い有様だった。
しかしそれを周りの人たちに分かられたくないと、いつもより念入りに化粧をする。
セリスにああ言われて自分で反省した以上、同じ過ちを犯してしまったことを気づかれたくはない。