素敵な王子様の育てかた。


「おはようございます、王子」

そんな私と打って変わって、王子はますます輝きを増していく。

今日も私が来る前に起きていた。
王子は私が扉を開けて入るなり、明かるげな声を発する。


「おはよう、ララ。おや?今日は随分と派手な化粧をしているね。なにか催しでもあるのかな?」


ただの寝不足を隠したくて厚塗りにしたのが、王子には派手に見えたらしい。
私の顔を見るなり、王子の顔が曇った。

なぜそんな顔になるのだろう。
心配しているようなものじゃない、まるで牽制しているような不機嫌さを感じ、少し困惑する。

「催し、ですか?王子の侍女である以上、そのようなものに参加する暇などありませんが……」

「あ、そうか。そうだよね。じゃあ、どうしてそんなに今日は濃いのかな?」


……あまり深く追求しないで頂きたい。

寝不足で酷い顔を必死に隠しているだけ。
ただそれだけのことだが、王子には関係ないじゃないか。

「特に意味はございません。そんなに気になるようでしたら、次から気をつけます」

「ふうん、そう。でもララは自然なほうが似合うと思う。あくまで俺の意見だけど」

そう言って王子は、面白くなさそうな顔を浮かべると、視線を窓のほうへずらす。

って、なに!?その返し!

そりゃあ私だって自然なほうが好きよ!
厚く塗るだけ顔が重ったるく感じて仕方ないくらいなんだし!

でもやらざるを得なかったのよ。そのくらい酷い有様だったのだから……。

けれど、王子の態度と言いぶりにやっぱり違和感を覚えて。

まるで王子は……。


……ううん。

まさかね、そんなこと。


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