素敵な王子様の育てかた。
「ああ、でも今日ここにララを連れて来れて良かった」
「え?」
「俺の大事な思い出の場所だから。形あるものは古ぼけて朽ち果ててしまったが、それでも大事な場所に変わりはないからね、だからララには知っていて欲しかったんだ」
「は、はあ……」
私は気の抜けたような返事をする。
というのも、王子が言わんとしていたことを、理解出来ていないからだ。
なぜ私にここを見せたかったのか。
王子の思い出の場所なのはよく分かったが、だからといってどうして私にそれを知って欲しいと連れて来たのか、答えが掴めずに疑問ばかりが増える。
「いい気分転換になったよ。ありがとう」
そんな私を知ってか知らずか、王子は優しい笑みを浮かべて私たちに感謝の気持ちを述べる。
最近よく見せる王子の微笑みに、そのたびにドキリとしてしまうのだが、気づかれないよう平静を保ちながら、礼をひとつ落とした。
……やっぱり分からない。
王子の考えていることが。
毎日近くにいて接していて、王子の人なりを知っていくはずなのに、どんどんと分からないことが増えていく。
それが妙にもどかしく、そして戸惑うものでもあった。