素敵な王子様の育てかた。
「いえ王子、それは考えすぎでしょう。セリスも神妙な面持ちで、このお話を持ち出してはおりませんでしたし、常にそういった気配も見受けられませんでした。ただ単にお話がしたいと言うだけで、王子の考えるような事態にはならないと思いますけれど」
「……そうか?」
「ええ。それにもし言われたとしても、迷惑をかけていることには間違いないのですから、申し訳なかったという気持ちを言葉にして、そして反省すればいいのです。過ぎてしまったことはどうしようもない、でも王子はこれからそれを正していこうと今、努力されているのですから。それはリフィト王子も分かってくれていますよ」
王子を安心させるように、私は軽く笑みを作る。
その瞬間、王子の目が大きく見張ったような気がしたが、すぐにその目は細められた。
「……そうだよな。心から謝罪し、反省する。今、俺にできることはそれくらいしかないな」
「ですからそんなに悩まないでいいと思いますよ。その気持ちを忘れずに持ち、リフィト王子と会えばいいだけなのですから。その小さな不安がまた殻に篭る材料なのだと思い、強く心を持ち続けて下さいませ。今の王子なら、きっと出来ますから」
その時ようやく王子の肩からフッと力が抜けたように感じた。
王子からは柔らかな笑みが零れている。
「ありがとう、ララ。君には言葉でも行動でも助けられてばかりだな」
「なにを仰います、王子。そのお言葉はとても私にはもったいないものですわ。侍女のくせに差し出がましいことばかりして、鬱陶しいと思われてもおかしくないんですもの」
「いや、そんなふうには思っていないよ。むしろ、とても嬉しい」