素敵な王子様の育てかた。

王子はそう私に告げると、傍へと寄ってくる。
そして目の前に立つと、私の右手をそっと取った。

王子の手の温もりが自身の手に伝わって、ドキリと胸が跳ねる。

「お、王子っ!?」

「もう一度言う、ありがとう。これからも俺の傍にいてくれ」


まるで愛の告白のような甘い台詞と共に、捕らわれた私の右手は王子の唇に軽く触れられた。

一気に身体中が火照るように熱を帯びる。


きっと王子は侍女として傍にいて欲しいと、その言葉を言ったのだろうが……。

私自身、こういった異性との駆け引きに慣れていないが、王子もまた引きこもっていたゆえに、深く考えず話しているのだろうと思う。


どういった言葉が相手を惑わせるか、彼にはその言葉の選択が分かっていない。

今の気持ちを素直に相手に伝えているだけ、それがたまにこうやって甘い言葉と行動を引き起こすのだろう。


相手が私だったからまだいいものの、これが他の女性だったらどうなっていたことか。


……いや、十分に惑わされているわ。

変に上がった心拍と身体の熱を落ち着かせるのに、えらく時間がかかってしまうのよ。
心の中では決してそんなことはないと思っているのに、身体は反応して余計疲れてしまう。



これはゆゆしき問題だ。

近いうちに、そういったやり取りも知ってもらわなければ大変なことになる。

でも、誰かそれを教えてくれる方がいるかしら……。


私の悩める問題がまたひとつ増えたと、心の中でため息を零した。


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