素敵な王子様の育てかた。
7最終段階!夜会までの道のり
"花嫁候補"
その言葉に、一瞬目の前がぐらりと歪んだ。
反動で手に持っていたポットから、温くなった湯が僅かに零れ、足元にかかり我に返る。
「も、申し訳ございませんっ、王妃様!濡れませんでしたか!?」
「間一髪、濡れなかったわ!あなたのほうこそ大丈夫?火傷しなかった!?」
「大丈夫です、もう冷めてしまったお湯ですから。このくらいすぐ乾きますので……」
そう言って、ほんの少し濡れた地面を見つめた。
――王子の花嫁候補。
こんなにも早く、相手となるお方が選ばれたとは。
……いや、ずっと王妃様が待ち望んでいたことだもの、早く決まって当たり前だ。
って、なぜこんなに動揺しているの?
「夜会参加のことについては、私と国王のほうからライトに話すわね。参加は公務のひとつでもあるから。でも、きっとライトのことだから参加に難色を示すと思うの。そこであなたから重ねて、参加するように、と言って欲しいの。……あなたにはとても信頼を置いているようだから」
「私に、そのような大役が務まるかどうか……」
「いいえ、あなただからできるわ。ここまでのライトの変わりようは、ララがいなくてはできなかったことだもの」