素敵な王子様の育てかた。
「――……ん」
妙な明るさを感じ、微睡んだ世界から一気にハッキリとした感覚に、瞼が上がる。
目に入って来たのは、灰色の天井。毎朝見慣れたものだった。
「ああ良かった……!目が覚めたわ!」
ここは?と考える間もなく、続けて聞き慣れた声が耳に入る。
横を向くと、安堵に満ちた顔で私を見つめているセリスの姿があった。
「……セリス?」
「大丈夫?あなたベッドで意識を無くしたまま、二日ほど戻らなかったのよ!」
「え……?ほ、本当?」
まさかそんなに日が経っているとは思わなかった。
覚えているのは、ベッドに伏せ泣きはらしたところまでで、それからの記憶がないのは確かだけれど……。
「凄く熱が高かったの。お医者様に診てもらったのだけど原因不明だと言うし、意識が戻るまでは安心できないと言われて……。でも本当に良かったわ。これまでずっと突っ走ってきたから疲れが出たのかもね、お休みもほとんどなかったし」
「そうなのね……。迷惑かけてごめんなさい」
「大丈夫、病気になるのは仕方のないことだもの。じゃあ私、早速ライト王子に報告しに行くわね。あなたはゆっくり休んでいて。まだ起きたばかりで本調子ではないから」
そう言って、セリスは足早に部屋を出ていく。
私はまた天井を見つめ、ふう、とため息のような息を吐いた。
自分は決してそこまで無理をしていたようには思わなかったが、思った以上に無理をしていたようだ。
まさか意識を無くして、二日も戻らないほどに深刻になるとは。
お陰で、周りに迷惑をかけてしまって。
ダメね、私は。
自分の身体も管理できないなんて、侍女失格だわ……。