素敵な王子様の育てかた。
遠くからバタバタと駆ける足音が聞こえ、近づいてくる。
その音が大きくなり、部屋の前で途切れたところで、扉が勢いよく開いた。
そこに立っていたのは、紛れもなく王子だった。
顔を赤くし、走ってきたからなのか髪も少し乱れ、息も荒く肩が上下している。
「……王子」
まさか私の部屋に王子が来るとは思わず、驚く。
王子はそのまま私の傍へ来ると、床に両膝をつき、私の手を握った。
その手はとても冷たく、ひんやりとした感触が伝わる。
「本当に良かった、ララが目覚めてくれて……。このまま目を覚ましてくれなかったら、俺は……!」
そのまま私の手は王子の額にあてられ、王子は安堵のため息をついた。
王子にまでこんなに心配をかけてしまって、申し訳ないという気持ちで、胸が締めつけられるように痛くなった。
そしてこんなに私を思ってくれていたことも嬉しく感じて、自然と涙が溢れて止まらない。
「申し訳、ございません。王子」
「俺が一番悪いんだ。ララをここまでさせてしまったこと。俺のワガママがララをこれだけ苦しめてきたことにこうなって初めて気づかされた。ゴメン、本当にゴメン」
「いえ、王子が悪いわけではございません。自身の体調管理が悪かったからです。自分の身体の状態も分からないようでは、王子の侍女として失格ですわね」
「そんなことはない!これは俺の責任なんだ。俺がララを追い詰めてしまったから……」
王子はそこで言葉を詰まらせ、懺悔するように俯く。
その姿がとても見ていて辛く、さらに胸が痛んだ。